コーディングエージェントPiが木曜、バージョン1.0に到達した。携えていたのは、開発者自身が公には不要と切り捨てていた機能である。Earendilのリリース記事は、Model Context Protocolのネイティブ対応を二つの主要な追加機能の一つとして挙げた。この標準は不要だと論じてきたMario Zechnerのプロジェクトにとって、明確な方針転換だ。
要点
- Pi 1.0はハーネス側のサンドボックス「Codemode」を追加し、MCPに加えて意思決定モデルや画像モデルもネイティブに扱えるようにした。
- Earendilによれば、毎週数十万人がPiを利用している。Piと新パッケージPi DurableはいずれもMITライセンスで公開された。
- Pi Durableはテストを除くソースが約1万5000行。EarendilはこれをGPT系で約15万トークン、Claudeで25万トークンと計算している。
EarendilがMCPへの判断を変えた理由
EarendilはArmin RonacherとColin Daymond Hannaが設立した企業で、2026年4月にPiを買収した。同社はThe Registerに対し、状況が変わったと説明した。MCP自体が改善され、Pi開発陣が加えた改変によって他の機能の統合も容易になったという。同社は具体例として意思決定モデルJevを挙げ、MCP周りの作業がJevをPi内で使いやすくしたと述べた。
同社は、根底にある要求が共通していると捉えた。Piが必要とするものはMCPが必要とするものとよく似ている、というのがその主張だ。すなわちインタプリタという形で与えられる、遊べるサンドボックスである。Earendilが掲げる方針は、エージェント関連のツールが自ら価値を証明するまで待ち、そのうえで実際の機能性と増える複雑さを比べることだ。リリース記事は、候補となった機能の多くは壁に貼りつかず剥がれ落ちたと表現している。
Codemodeが実際に担う役割
Codemodeは新しい対応を支えるハーネス側のサンドボックスだ。プロトコルのクライアントをエージェントループに一つずつ通すのではなく、モデルがツールを呼び出しスクリプトを実行する場所を与える。MCPサーバー、Jevのような非LLMの意思決定モデル、画像モデルがいずれもこの中に収まる。Earendilのデモでは、Piが1週間分のコミットを短い要約に圧縮するスクリプトを自ら書いた。さらに、Claude Opusで計画しGPTで実装し、その切り替え時期をJevが判断する拡張機能をPi自身が組み立てる様子も示された。
今回のリリースでは、会話の途中に差し込むシステムメッセージも追加された。プロンプトやツールセットを対話の最中に変更できる。The Registerは同じビルドに含まれる変更として、仮想モデルへの拡張対応、ツールの遅延読み込み、Anthropicモデル向けのキャッシュウォーミング、新しいTUIテーマ、既定で有効になった全画面モードを挙げている。
長時間稼働エージェントを狙うPi Durable
二つ目の成果がPi Durableである。ターミナルのセッションより長く生き続けるエージェントアプリケーション向けの実験的パッケージだ。EarendilはPi本体を最小限に保つため、あえて分離した。Piがキーボードの前にいる一人のために一つのモデルをツールへつなぐのに対し、Pi Durableは複数の会話を調整し、その下の保存層まで自ら受け持つ。
メモリ、SQLite、JSONLの各バックエンドを標準で備え、独自実装のための適合性テスト群とベンチマークも付属する。EarendilはSQLiteとJSONLのコードがNodeのAPIを使っていない点を指摘した。小さなアダプタを挟めばBun上やCloudflare Durable Objectの中でも動くという意味である。メモリに残るのは、進行中のトランスクリプト、実行中のタスク、保留中の投入からなるワーキングセットだけだ。古いメッセージはモデルのコンテキストウィンドウを溢れさせる前に、コンパクション処理で要約される。
コード量は注記ではなく機能として扱われている。EarendilはPi Durableをテスト抜きで約1万5000行、GPT系で約15万トークン、Claudeで25万トークンと示し、うち3000行は保存バックエンドが占めていてエージェントは通常読み飛ばせると補足した。エージェントが自分の動く土台であるハーネスを読めること、それが掲げられた目標だ。
大型ハーネスとの位置づけ
今回の公開は、はるかに規模の大きい企業が各自のハーネス層を押し出している時期に重なった。AWSがStrandsハーネスをオープンソース化した件を扱った本紙記事は、その一例である。Piが向かう方向は逆だ。The Registerの例えはDjangoではなくFlaskだった。発表はHacker Newsで当日290ポイント超を集めた。
両パッケージともライセンスはMITだ。PiはmacOSとLinuxではシェルコマンド一つ、Windowsでは相当するPowerShellコマンドで導入でき、ドキュメントはpi.devにある。Pi Durableは三つの実験的パッケージとしてnpmで公開されている。
FAQ よくある質問
Piはオープンソースなのか
そうだ。EarendilはPiと実験的なPi DurableをいずれもMITライセンスで公開し、ドキュメントをpi.devで提供している。PiはmacOSとLinuxならシェルコマンド一つ、WindowsならPowerShellコマンド一つで導入できる。
Pi DurableはコーディングエージェントPiを置き換えるのか
置き換えない。EarendilはPi DurableがPiを代替するものではないと明言しており、コーディングエージェントを含むあらゆるエージェントアプリケーションを構築するためのフレームワークだと説明している。pi-aiなどのコードをPiと共有し、そこで得られた知見は妥当性が確認され次第コーディングエージェントへ還元されるという。
Pi 1.0のJevとは何か
JevはPiが非LLMの構成要素として呼び出せる意思決定モデルである。Earendilのデモでは、計画用モデルと実装用モデルを切り替えるタイミングを判断する役割を担った。同社は自社のMCP関連の変更がJevをPiへ組み込みやすくしたと説明している。






