アポロのスロック氏「AIの財務的成果、テック以外ゼロ」
アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は10月24日、AIはテック業界以外の米企業に財務的成果をまったくもたらしていないと指摘した。生産性統計にもAIの効果はまだ表れていない。
米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は10月24日(現地時間)、人工知能(AI)はこれまで「テック業界以外の米企業に財務的な成果をまったくもたらしていない」との見方を示した。同社の解説シリーズ「デイリー・スパーク」で、売上高と利益率の改善は巨大テック7社(マグニフィセント・セブン)に限られ、残るS&P500企業は横ばいだと指摘した。

要点
- 従業員1人当たり売上高と利益率が伸びているのはマグニフィセント・セブンだけで、残る493社は横ばいだとスロック氏は分析した。
- AIが生産性の伸びを押し上げた兆候はまだなく、一般企業はトークン支出をコストとみなし始めているという。
- Rampの集計では9月に米企業の55.9%がAIに支出したが、従業員1人当たり月額支出の中央値は15.70ドルにとどまる。
アポロのスロック氏「AIの成果はビッグテックだけ」
「テック業界以外にAIの成果の兆しなし」と題したリポートは、5つのグラフを根拠に挙げる。うち2つはマグニフィセント・セブンと、それを除いた「S&P493」を比較したものだ。2019年第4四半期を基準に物価調整した従業員1人当たり売上高は、テック企業でのみ上昇している。利益率も同じ傾向である。
3つ目のグラフはサンフランシスコ連邦準備銀行の稼働率調整済み全要素生産性(TFP)を用い、「AIが生産性の伸びを押し上げた兆候はない」と結論づけた。本文には具体的な数値は示されていない。
スロック氏は、一般企業がトークン支出を「成長の源泉ではなく、利益率を圧迫するコストセンターとみなし始めている」と書いた。多くの企業は最新モデルを必要とせず、その対価を払う意思もないという。
AI支出は一部企業に集中しているのか
残りのグラフは、法人カード・支出管理を手がける米Rampのデータに基づき、AI支出が「ごく少数の企業に極端に集中している」ことを示す。
Rampが公開する「AIインデックス」を見ると、導入は広く、支出は薄い。8万5000社超のカード・請求書・口座振替の取引を集計した結果、2026年9月にAI製品に支出した米企業は55.9%だった。8月の55.2%から上昇し、前年同月比では12.1ポイント高い。
| 指標 | 最新値 | 出典(時点) |
|---|---|---|
| AIに支出した米企業の割合 | 55.9% | Ramp AIインデックス(2026年9月) |
| 人件費を除く企業支出に占めるAIの比率 | 5.77%(前月5.96%) | Ramp AIインデックス(2026年9月) |
| 従業員1人当たり月額AI支出の中央値 | 15.70ドル(前月14.74ドル) | Ramp AIインデックス(2026年9月) |
| 非農業部門の労働生産性 | 年率1.4%増、前年比2.2%増 | 米労働統計局(2026年4〜6月期改定値、9月3日) |
Rampが別途集計するトークン支出のサンプル(同社はAI支出全体を代表しないとしている)では、10月11日までの1週間のトークン支出総額が前年比23.0%増、利用量は52.4%増だった。
背景:生産性統計はまだ結論出ず
公式統計もまだ答えを出していない。米労働統計局(BLS)は9月3日、2026年4〜6月期の非農業部門の労働生産性が年率1.4%、前年同期比2.2%伸びたと発表した。前年比で産出は2.5%、労働時間は0.2%増えた。この数字だけではAIの寄与を切り分けられない。
スロック氏は「AIは説明責任、信頼、文化、暗黙のルール、倫理的なトレードオフ、公平性を理解しない」とも述べ、こうした要素が企業の評判リスクや売上高を左右すると指摘した。
今後の焦点は「S&P493」
スロック氏は、エージェント型AIとトークン支出が経済のごく一部にとどまる限り「AIのマクロ経済効果は非常に限られる」とみる。結論は「AIの物語の行方を決めるのはマグニフィセント・セブンではなくS&P493だ」というものだ。7〜9月期決算と労働統計局の次の生産性統計が、この見方を検証する材料となる。
よくある質問
「S&P493」とは何か
S&P500から巨大テック7社(マグニフィセント・セブン)を除いた残りの企業を指す言葉である。
アポロはAIに価値がないと言っているのか
そうではない。成果はこれまでテック企業の1人当たり売上高と利益率にしか表れていないという指摘である。
米企業はどの程度AIにお金を使っているのか
Ramp AIインデックスによると、2026年9月に55.9%がAIツールに支出した。Rampは実際の導入率はさらに高い可能性があるとしている。
参考資料
- No Signs of AI Payoff Outside the Tech Sector — アポロ、デイリー・スパーク(2026年10月24日)
- Ramp AI Index — Ramp Economics Lab(2026年9月データ)
- Productivity and Costs, Second Quarter 2026, Revised — 米労働統計局(2026年9月3日)
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