ミストラル、1兆パラメーター「Large 4」の重みを公開
仏ミストラルAIは10月29日、1兆パラメーターのMoEモデル「Mistral Large 4」の重みをHugging Faceで公開した。アクティブパラメーターは約490億、コンテキストは100万トークン。
仏AI企業ミストラルAIは2026年10月29日(現地時間)、1兆パラメーター規模の主力モデル「Mistral Large 4」の重みをHugging Faceで公開した。10月上旬にプレビュー版を出した際に掲げた「10月末までに重みを公開する」との約束を守った形だ。同社は「ル・ションク(Le Chonk)」の愛称を持つこのモデルを、企業や政府が自前の設備で動かせるサイバー防御向けモデルとして売り込む。

ポイント
- ライセンスはMITを改変した「Mistral Ecosystem Open-Weight License」である。商用利用は自由だが、モデルをホスティングサービスとして提供する企業は別途契約が必要だ。
- 総パラメーターは約1兆だが、1トークンあたり使うのは約490億にとどまる混合エキスパート(MoE)構造である。コンテキストは100万トークンで、画像入力にも対応する。
- 悪意あるサイバー関連リクエストの平均拒否率は96.6%。ただし同社は、実際の攻撃を後押しする「潜在的な可能性」が残るとして安全対策を見直している。
Mistral Large 4のオープンウェイト、何が公開されたか
Hugging Faceのモデルカードによると、Large 4は128個のエキスパートからトークンごとに4個を選び、共有エキスパート1個を加える構造だ。アクティブパラメーターは約490億、埋め込み層と出力層を含めると520億となる。
テキストと画像を読み込んでテキストで答え、160以上の言語に対応する。推論の強さは低・中・高(既定値)の3段階だ。FP8の重みに加え、エヌビディアのBlackwell向けNVFP4チェックポイントやllama.cpp向けGGUFファイルも用意された。例示された構成はGPU8基を積んだサーバー1台で、vLLMかSGLangで動かす。
Mistral Large 4の性能と料金
同社は公開発表で、Artificial Analysisのコーディングエージェント指数で48%を記録し、中国のGLM-5.3と事実上並んだと説明した。タスクあたりのトークン消費は平均47%少ないという。Terminal-Bench 4.0のスコアはプレビュー版の28%から41%に上がり、出力トークンは30%減った。
| ベンチマーク | プレビュー版 | 公開版 |
|---|---|---|
| Terminal-Bench 4.0 | 28% | 41% |
| B3攻撃耐性 | 93.3% | 97.1% |
| Artificial Analysisサイバー指数 | — | 51% |
| BrowseComp | — | 84.5% |
モデルカードには、Artificial Analysis知能指数v5で26を獲得し、欧米のオープンウェイトモデルで最高だとの記載もある。API料金は100万トークンあたり入力0.70ドル、キャッシュ入力0.07ドル、出力2.10ドル。OpenRouter、エヌビディアのNIM、マイクロソフトのFoundryでも提供される。
なぜサイバーセキュリティを前面に出すのか
セキュリティ部門は自ら管理できる強力なモデルを求めている、というのが同社の読みだ。ミストラルで科学部門を率いるピエール・ストック副社長は米TechCrunchに対し、オープンウェイトであるがゆえに「定義上、遮断されることのないアクセス」を得られると語った。アルチュール・マンシュCEOは、AIは「支配ではなく力を与える道具」であるべきだと述べた。
一方、公開した重みは取り消せない。同社はプレビュー後、実在の標的へのブラックボックス攻撃をモデルが拒否することを確認したが、攻撃者を利する可能性はなお残るとみる。セキュリティ特化版はオレンジ・サイバーディフェンスなど審査を経た設計パートナーに限ってプレビュー提供している。ストック氏は「不安をあおりたくはない。解決できる問題だと考えている」と話した。
今後の見通し
ミストラルは9月、企業価値210億ユーロで30億ユーロを調達した。モデルの学習にはエヌビディアのGrace Blackwell GPU3800基を使った。重みが公開されたことで外部の研究者が拒否率やベンチマークの数値を直接検証できるようになり、その結果がセキュリティ運用現場での採用を左右しそうだ。
よくある質問
商用で無料で使えるのか。
おおむね使える。利用・改変・ファインチューニング・商用化は認められているが、モデルをサービス(MaaS)として提供する企業はミストラルと別途商用ライセンスを結ぶ必要がある。
どんな設備が必要か。
同社の例示構成はGPU8基を搭載したサーバー1台だ。NVFP4チェックポイントはBlackwell GPU向けで、llama.cpp向けのGGUF量子化ファイルもある。
参考資料
- Mistral Large 4 open weights — Mistral AI(2026年10月29日)
- mistralai/Mistral-Large-4-1T-A52B — Hugging Faceモデルカード
- Mistral releases weights for its trillion-parameter AI model targeting cybersecurity — TechCrunch(2026年10月29日)
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